究極のスリム財布、再誕!
ワープロラックスカーフ製の束入れです。
伝説の技法である吹下冠(ふきおろしかぶせ)と、シュランケンカーフの財布シリーズで定評のある薄造りの技法のコラボレーションで、極限までスリムなお財布を実現しています。
■束入れ(たばいれ)とは
束入れは長財布のひとつで、小銭入れが付かないもの。お札を折らずに束で仕舞えるもののことを指します。
かつては、紳士用財布の主流のひとつでした。
現金払いが当たり前で、小銭はズボンのポケットにじゃらじゃら。免許証は今よりも大きくて、専用ケースがあった頃。クレジットカードではなくツケ払い。銀行では窓口に通帳を出し、ポイントカードはハンコだった時代。背広のポケットからはお札だけ出せれば良い。お財布は今よりももっとシンプルだったのです。
それが、免許証、保険証、クレジットカード、キャッシュカード、そしてポイントカードと、さまざまなものがカードになって、お財布に集まってくるようになり、お財布は段々と大きくなってきたのです。
ですが、そのカードの機能の多くがスマートフォンに移り、お財布は再びシンプルに、スリムになってきました。
そんな令和の時代に、満を持して復活したのが、この束入れです。
■吹上冠(ふきおろしかぶせ)と薄造(うすづくり)の技法
この束入れの特徴である吹下冠は、かつて、piccinoの看板であった、ひとりの天才職人が得意としていた技法です。
「吹下」というのは、山風が山頂から麓まで吹き下ろすように、表裏で上から下へすっと本体が続いているかたちのことを表します。業界の古老によれば、半世紀近く前にわずかに造られていたかたちで、現在では造っているメーカーはほとんどありません。
多くのお財布は、前後や上下のパーツが一枚の革で作られていて、輪を描くように折れています。ですが、革は弾力があるので、どれだけ薄くても折り紙のようにぺたりとは折れません。カード段や小銭入れなどの分、内側に空間を必要とするので、その隙間にちょうどそれらが入るのです。
ですが、束入れのように、札入れとカード段だけのシンプルな本体と冠(かぶせ)の構成では、その空間はほとんど必要ありません。そのため、天が輪っかになると、そこが一番、無駄に厚くなってしまうのです。
そのため、この束入れは、裏胴と表冠が別々のパーツで、それを天で縫い合わせています。これによって、天に余分な空間を作らず、表と裏がぺたんとくっつくように、全体が薄くすっきり仕上がるのです。
言ってしまえば単純な話ですが、「コロンブスの卵」ではありません。「言うは易く行うは難し」「シンプルなものほど難しい」といった言葉の通り、これを実現するのはとても難しいのです。
そのため、類似の製品は市場ではほとんどありませんし、piccinoでも、その天才職人が引退してからは、伝説のアイテムとなっていました。以前の製品をお使いの方からのお買い換えのご要望も数多くいただきながら、長らくお断りをしておりました。
しかし、スーツの内ポケットにスッと滑り込ませられ、コンパクトなハンドバッグやポーチにも場所を取らず入るこの薄さは、コンパクト財布スリム財布が望まれる令和の今こそ、必要なアイテムです。
そのため、シュランケンカーフの財布シリーズを担当している職人と、数年越しで検討と試作を重ね、ようやくこの吹上冠の技法の再現に成功したのです!
また、その職人は、元々持っている薄造りの技法により、表革のワープロラックスカーフの裏に、極限まで薄くしたヌメ革を貼り合わせることで、素材の質感を活かしたまま、強度を持たせつつも、薄く仕上げることができました。以前の製品よりも価値感が増しているともいえます。
■素材の特徴
ワープロラックスカーフは、ドイツで百五十年の歴史を誇った老舗タンナーの技術を継承する職人たちが送り出している、世界最高峰の型押し革です。
型押し(エンボス加工)は、つるりと滑らかな皮革の表面に型(クロコダイルなどの爬虫類のうろこ模様や、細かい粒状のものが代表的)を押すことで、表情や陰影を付け、魅力的な味のある革素材とする技法です。
型押しの多くは、キップレザーなどの成牛の革の価値を高めるために行われます。しかしワープロラックスカーフは、スイスの牧場でのびのび育った素性のたしかな仔牛の皮からつくられる世界最高級のカーフレザーに、あえて精緻な型押しを施すことで、柔らかな質感を活かしながら、魅力的な表情と質感を現しています。
鉱物起源のクローム剤に天然のタンニンを併用してなめされた、双方のいいとこ取りの良質な革素材です。鮮やかな発色は褪せにくく長く留まり、柔らかでコシのある触感をそのままに活かします。表面は水気や小傷にも強く強靱です。脂気の抜け方も緩やかでなので、経年による乾燥や破断なども簡単には起こりません。
欧州の著名なメゾンでも採用されている高級素材で、良い特性を数多く備えています。
この革で作る製品はどうしても高価になってしまいますが、お値段以上に価値のある革素材で、長く変わらずお使いいただける製品に仕上がります。